防災リュックの中身と期限の管理
防災リュックの怖いところは、中身が減ることではありません。中身がそのままの場所で、静かに使えなくなっていくことです。用意した日が一番新しい日で、その後は誰も開けないまま年数だけが積み上がります。玄関にリュックがあるという事実は安心感をくれますが、その安心感は中身の状態とは何の関係もありません。
用意した日が一番新しい日
防災リュックは、詰めた瞬間に完成したように見えます。だから他の持ち物と違って、その後ほとんど触られません。台所の食材は使うたびに目に入り、古いものは自然に気づきます。リュックの中身は使わないことが前提なので、気づく機会が構造的にありません。中身が古くなっているかどうかは、開けない限り分からず、開ける理由は普段は発生しない。この二つが重なって、多くのリュックは何年も点検されないまま置かれています。
しかも困るのは、必要になる日が唯一の答え合わせの日だということです。そのとき期限切れの水と、子どもの足に入らない靴と、電池の切れたライトが出てくる。備えていなかったわけではなく、備えたものが古くなっただけなのに、結果は同じになってしまいます。
中身は三種類に分けて考える
すべてを同じ基準で見ようとすると点検が重くなります。実際には、古くなり方が違う三つの種類しかありません。
期限が切れるもの。水、非常食、レトルト、常備薬、ウェットティッシュ。これは日付がはっきりしている分、扱いは一番簡単です。難しいのは日付を読むことではなく、その日付を年に一度でも見る仕組みがないことです。
体や暮らしが変わって合わなくなるもの。子どもの靴と着替え、おむつのサイズ、粉ミルク、常用している薬の種類。これは期限の印刷がないのに、実は一番早く使えなくなります。三年前に入れた子どもの靴は、期限が切れていなくても履けません。家族構成が変わったときも同じで、人数分あるはずのものが足りなくなります。
動かなくなるもの。乾電池、モバイルバッテリー、懐中電灯、ラジオ、カセットボンベ。使っていなくても放電し、劣化します。液漏れした電池が機器ごと駄目にしていることもあります。ここは日付ではなく、動くかどうかを実際に確かめるしかありません。
記録しておくと役に立つのはこれだけ
細かい台帳を作ろうとすると、たいてい二回目で続かなくなります。実際に効くのは次の三つだけです。
- 何が入っているか。リュックを開けずに中身を言えることが、点検の前提になります。
- いつ入れたか、または期限はいつまでか。年ではなく季節くらいの粗さで十分です。
- 誰のためのものか。子ども用、高齢の親用と分けておくと、サイズや薬の入れ替え時期が判断できます。
この三つが分かっていれば、点検は中身を全部出す作業ではなく、入れ替えるものだけを取り出す作業になります。所要時間が三十分と一日では、続くかどうかがまったく変わります。
点検の日を自分で決めない
「気づいたときに見る」は、まず実行されません。防災の日や、地震のあった日など、毎年必ず意識する日に紐づけておくと、思い出す努力がいらなくなります。年に二回あれば十分で、片方は季節の変わり目に合わせると、子どもの服やサイズの入れ替えとまとめて済みます。
Kept は家にあるものを記録して、買う前に確認するためのアプリです。リュックの中身を出したついでにまとめて撮って登録しておけば、次に買い足すとき、店の前で「電池はもうあったか」を調べられます。物品は家族の誰かに紐づけられるので、子ども用の中身と大人用の中身が混ざりません。長く触っていないものは経過日数として見えるようになるため、点検の日を忘れていても、そのリュックが何年開けられていないかは目に入ります。
点検できている状態とは
完璧に新しい中身のリュックのことではありません。開けなくても中身が言えて、次に何を入れ替えればいいかがすぐ分かる状態のことです。備えているかどうかは、リュックがあるかどうかではなく、中身が今の家族に合っているかどうかで決まります。