なぜ自分がすでに持っているコスメを買ってしまうのか
引き出しの中には「いつものヌードカラー」の口紅が四本、どれも捨てられないまま並んでいて、カウンターの向こうにはまだ五本目が気になっている。買った瞬間はどれもおかしな判断ではなかった——選んだときの光の下では、どれも正解に見えた。コスメは他のどんなものより重複が生まれやすいカテゴリーだが、それは欲張りだからではなく、手元の色と家の引き出しにある色を比べること自体が、そもそも難しいからだ。
チューブの中の色は、頭の中の色と同じではない
ジャケットならクローゼットにあるかないか、白か黒かですぐに確認できる。口紅やファンデーションは色であり、色は記憶がいちばん頼りにならない情報のひとつだ。「いつものヌードカラー」を思い浮かべて店に入るとき、比べているのは目の前の一本と具体的に思い出せる何かではなく、これまで気に入った似たような色をまとめた、ぼんやりした平均値だ。この比較は、二本を並べれば一目で違うとわかる色同士でも、平気で「同じ」と判定してしまう。「似たものを持っている気がする」と「これをすでに持っている」のあいだの隙間、そこに五本目の口紅が入り込む。
カウンターの照明は、何でも良く見えるようにできている
コスメカウンターの照明は暖色で均一、少し拡大して見える鏡と組み合わされていることが多い。理由は単純で、良く見える客のほうが買うからだ。それは、家の洗面所の普通の照明の下にある色と、本当に違うかどうかを判断するには、最悪に近い条件でもある。カウンターの照明の下で明らかに良く見えた色が、家に帰って自然光や普通の照明の下で見ると、すでに持っているものとほとんど変わらないことがある。その「良く見えた」の大部分は照明の仕事であって、色そのものの新しさではない。
実際に起こる三つのパターン
「自分の色」は一点ではなく、幅のある帯だ。ブランドをまたいだヌードカラーやリップの色味は、パッケージが示すよりずっと近いことが多い。ブランドAとブランドBのヌードリップが、肌にのせれば誰にも見分けがつかないほど似ていても、チューブ自体はまったく別物に見える。パッケージは、それが化粧ポーチの底にある一本と機能的に同じだとは教えてくれないから、毎回まっさらな決断のように感じてしまう。
「数量限定」が、閲覧をカウントダウンに変える。季節限定パレットやコラボコレクションには、あらかじめ締め切りがついてくる——今買わないと、この色はもう再入荷しない。この枠組みは判断を「必要かどうか」から「買わなかったら後悔しないか」へと押しやる。後者のほうがずっと引き金を引きやすく、その瞬間まったく頭にない引き出しの中身と比べるにはずっと不向きだ。
化粧ポーチはクローゼットのようには見渡せない。服はハンガーに正面を向けて掛かっている。口紅は似たような円筒形の容器が何本も並ぶ中の一本で、横から見ても色番号すら読めず、パレットやブラシの下に埋もれている。実際には十分すぎるほど持っていても、足りない気がしてしまう。「自分が何を持っているか」が一目でわかる情報ではなく、掘り出さないとわからない情報だからだ。だからカウンターの前では、単純に思い出せない。
「これだけ似ていたら気づくはず」が通用しない理由
この三つを重ねると、記憶を信じる根拠はかなり薄くなる。本来必要な比較——このチューブとあのチューブを並べて見ること——は、実際には一度も起きていない。起きているのは、カウンターの照明の下で手の甲に引いた試し塗りと、家のポーチの奥に埋もれた何かのぼんやりしたイメージを突き合わせることだけだ。記憶は、そもそも向いていない仕事を二重に背負わされていて、カウンターで「新しい色に見えた」という感覚は、証拠にはならない。
実際に効く対策
試し塗りは手の甲ではなく、あご下や手首の内側にして、自然光やドア際まで移動してから判断する——カウンターの照明だけでは中立な判断材料にならない。一分待ってみる。のせた瞬間は際立って見えた色も、肌となじんで少し時間が経つと、すでに持っている色にかなり近づくことがある。可能なら、記憶と比べるのではなく、ポーチの中で今使っているものと直接比べる。直接比較は、記憶だけでは拾えないものを拾ってくれる。
記憶より写真が効くカテゴリー
これは、リストより写真のほうが効く数少ないカテゴリーのひとつだ。「暖色系のヌードリップが一本」というメモでは、カウンターの前で新しい一本が本当に違うのか答えられない。開いた化粧ポーチの写真ならそれができる。比較を「記憶対実物」から「実物対実物」に変えるからだ。Kept はまとめて十点まで撮影して認識させられるので、似たような口紅が並ぶ引き出しも、一本ずつ入力する代わりに一枚の写真で済む。そこから先、「買う前に確認」の検索は通信がなくても使える——これは特に重要で、この手の購入が実際に起こる瞬間は、家でじっくり考える時間があるときではなく、カウンターの前やショッピングアプリをスクロールしているその場だからだ。
うまくいっている状態とは
今持っているものだけで化粧ポーチを凍結させることでも、新しい色をもう買わないというルールでもない。それは、ポーチの中の大半が実際に使われていて、新しい色を買うのは本当に足りない何か——自分ではっきり指させる、持っていない色——があるからであって、カウンターの照明と「数量限定」のシールが、見慣れた色を一瞬だけ新しいアイデアに見せたからではない、という状態だ。